冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い

 つわりで食欲がまったく湧かないが、まだ口に入れられるフルーツいくつか購入し、香蓮はスーパーをあとにする。

 調子がいいうちに自宅に戻りたい香蓮は、寄り道もせずにマンションへと向かう。

 エントランスに足を踏み入れたそのとき、背後からポンッと肩を叩かれた。

 (え……?)

 突然人の手が乗ってきて驚いた香蓮は、反射的に後ろを振り返った。

 「おねーちゃん、ようやく帰ってきた~!」

 自分の背後に立っていた人物を見た瞬間、香蓮は硬直する。

 愛理と由梨枝……そして実の父親である達夫が立っていたのだ。

 「どうして、お父さんたちがここにいるの」

 香蓮は激しい動悸に襲われながら、声を震わせる。

 やはり、いくら玲志といるから大丈夫だと思えても、彼らを前にすると長年いびられ続けた恐怖を体が思い出してしまうようだ。

 すると恐縮しきった彼女を見て由梨枝がけらけらと笑い声をあげる。

 「香蓮、どうしてそんな怖い顔をしてるのよ。私たち家族でしょう?」



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