冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い
「家族……?」
由梨枝の言葉に、香蓮は不信感を覚える。
彼女の記憶では、由梨枝に家族扱いされたことなど一度もないからだ。
「そうよ、お姉ちゃん! 私たち家族でしょ。最近どうしてるのかなって、気になって遊びに来たのよ」
「玲志くんは全然取り合ってくれないし、しまいにはお前に連絡するなだなんて……実の娘に会えないなんて、信じられないだろう」
由梨枝に便乗するように、達夫も愛理も饒舌になる。
(どうしよう、玲志さんもいないし。早くここから逃げなくちゃ)
突然の出来事に香蓮の頭が追い付いつかないでいると、突然愛理が「あっ!」っと、大きな声を上げた。
「ねぇ、お姉ちゃん! それってもしかしてマタニティマーク?」
愛理に指摘された瞬間、香蓮の血の気がサッと引く。
(ああ、どうしよう。この人たちには、赤ちゃんがいること知られたくなかった)
香蓮が黙って俯いている中、由梨枝が口火を切る。
「……おめでとう香蓮。私たち、大事な話があってきたの」
「大事な話?」
暗い表情で顔を上げた香蓮に、由梨枝は優し気に微笑む。
「外は寒いし、お腹の子にも影響があるからあなたの家で話をさせてくれないかしら」