冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い

 子供を出しにされ、香蓮の心が揺らぐ。

 だがこの三人のいう大事な話に“金”が絡んでいるのは安易に想像できた。

 これ以上、自分の人生を彼らに振り回されたくない。子供ができたらばなおさらだ。

 「私からは何も話すことがありません。もう飛鳥馬家の者ではないんですから……」

 香蓮がはっきりと自分の意思を伝えたことに、三人は驚いたが、すぐに気を持ち直したように笑みを作る。

 「あなたの言い分はごもっともだけど、飛鳥馬家が今大変な状況にあるの。十分(じゅっぷん)だけ……私たちの話を聞いてくれるだけでいいの」

 「つっ……」

 強いストレスがかかったせいか、激しいめまいに襲われた香蓮はその場にうずくまる。

 すると後ろで見ていた達夫がやって来て、香蓮の腰を抱き寄せ、彼女の肩を抱いて歩き出す。

 「大丈夫か、香蓮。家まで送っていくから、私たちと話をさせてくれ」

 「……っ」

 香蓮は自分では歩くこともままならず、仕方なく達夫の肩を借りる。

 もちろん二人の後ろには、由梨枝と愛理も一緒についてきており、香蓮は不安でいっぱいだ。

 (早くこの三人と別れたかったのに。どうしてこんなことに)
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