冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い
香蓮は仕方なく三人を自宅に案内し、眩暈が収まるまで休ませてほしいと達夫に告げる。
「あんた、本当にいい暮らししてんのねー」
遠くのほうで由梨枝の声がし、視線を向けると近くで愛理が勝手に冷蔵庫を開けていた。
「でもその割にはほとんど食材入ってないよ! お姉ちゃんちゃんと料理してないなんてサイテー」
愛理の失礼な言葉にズキッと胸が痛くなる。
玲志が家にいる間に食材を使い切った後、買い足していないだけであり、家にひとりになったつわり中の香蓮は食事をとっていなかったのだ。
香蓮は愛理の勘違いを弁解したいところだったが、自分が言ったところでさらに言い返されるのが分かっているし、お腹の子にこれ以上のストレスを与えないために、ぐっと言葉を飲み込む。
「あの、話って何でしょうか? 早く終わらせてください……」
一刻も早く三人に自宅から出て行ってもらいたいため、香蓮は本題に踏み切る。
すると達夫はにまりと妖しい笑みを浮かべた。
「香蓮。玲志君と別れてくれないか」