冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い
突拍子もない達夫の発言に香蓮は戸惑う。
「どうして? 元はといえば、結婚してほしかったのはお父さんですよね?」
「それはそうだが、大した金にならなかった。日向君に出してもらった金はすべて使い切ってしまったし、これ以上出す気もなさそうだし、もう無意味だろう」
香蓮は玲志が達夫に払った額が、大金なのは十分すぎるほど分かっている。
元々藤山が支払う額よりもさらに上回る額を彼が提示したことで、ふたりは結婚に至ったのだから。
「お父さん、その言い方はあんまりよ。玲志さんは私たちを救ってくれたのに……!」
すると冷蔵庫から勝手にアイスを取り出した愛理と、仏頂面の由梨枝がこちらに近づいてくる。
「お金のこともそうだけど、私、藤山さまとどうしても結婚したくないのよ」
香蓮の心臓がドキッと音を立て跳ねあがった。
(先日、藤山さんが愛理ちゃんと結婚するかもって話……本当だったんだ)
すると続いて由梨枝が香蓮の横に着席し、不自然な笑みを浮かべ顔を覗き込んできた。
「飛鳥馬家がこんな状況になって、見かねた藤山さまが愛理を妻に迎えられるならお金を出すと手を差し伸べてくれたの。でも、可愛い年頃の我が子が好きでもない男と結婚だなんて酷すぎて親としても見ていられないのよ」