冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い

 香蓮の場合、藤山から縁談を申し込まれた際は断る選択肢すら与えられなかったのに、全く矛盾した話だ。

 黙り込んでいる香蓮の横を、お次は愛理が座る。

 「それに私、玲志さんのことすっかり好きになっちゃった」

 「え……?」

 「だから譲って。おねーちゃん」

 平然と笑顔で言い放つ愛理に、香蓮は反射的に首を横に振った。

 「それだけは絶対にできない。私にとって玲志さんは誰よりも大切なの。お腹の子も、玲志さんとの子なの。私たちから玲志さんを奪わないで……!」

 「あはははは!」

 香蓮の必死の訴えを、由梨枝の甲高い笑い声がぶち壊す。

 「あんたは本当に不憫ねー! あの日向玲志が、香蓮なんかを本気で愛するわけがないじゃない!」
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