冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い
 香蓮の前に、由梨枝がスマホを差し出す。

 画面には玲志と女性がホテルの一室の前で抱き合っている姿が映っていた。

 女性は嬉しそうに笑いながら、バスローブを着ている玲志に飛びついている。

 親密じゃないと言ったところで、誰も信じられないような密着した写真だ。

 「これは……?」

 「偶然泊ったラグジュアリーホテルで、玲志さんをお見かけしたのよ。午前一時頃だったかしら」

 由梨枝がいう〝午前一時〟というワードが、香蓮の心をざわつかせる。

 昨晩、玲志からメッセージがあったのが午前一時頃だった。

 それまでの時間はトラブルがあり、電話ができなかったと言っていた。

 この写真が本当だったら、玲志は香蓮にメッセージを送る直前までこの女性と一緒に過ごしたということになる。

 「元々、あんたと玲志さんはまったく釣り合っていない。愛理の方が可愛くて妻としてふさわしいに決まってるでしょう」

 「もーママったら~」

 香蓮がショックのあまり絶句していると、フンッと達夫の鼻で笑う声が聞こえてきた。

 「お前、どうせ無理やり孕まされたんだろ? 中絶料と浮気された慰謝料、ふんだくって愛理にその場を譲ってやれよ」
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