冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い

 「ご依頼人をお伝えすることはどうしてもできません。申し訳ありません……!」

 男は玲志にそう告げると、あっという間にその場から消えてしまった。

 別れさせ屋という聞き覚えのない単語に、玲志はネットで検索してみる。そこに書いてあったのは交際するふたりを第三者が意図的に分かれるように工作する事業のようだった。

 (どういうことだ? 俺と香蓮を別れさせたいやつがいるというのか?)

 玲志はふと、昨晩起きた不可解な出来事を思い出す。

 会食中に通りすがりの女性にワインをこぼされ、部屋に戻って着替えている最中、これまた知らない女が部屋にやって来て急に抱き着いてきたのだ。

 抱き着いてきた女性は自分の彼氏と間違えてしまったとすぐに帰っていったが、あれもやけに違和感があった。

 別れさせ屋の工作のひとつなのだろうか。

 「なんだか気味が悪いな。香蓮はどうしてるだろう」

 急に彼女のことが心配になった玲志は、メッセージで様子を伺う。

 しかしいつまでたっても既読にならず、不安が募っていく。

 (そういえば昨日、香蓮は俺に大事な話があると言っていた)


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