冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い


 一通り仕事が片付き、玲志は家にいるはずの香蓮に電話をかけてみる。

 しかし彼女には繋がらず、時間だけが刻一刻と過ぎていった。

 (香蓮の身に何もなければいいんだが……)

 先程の別れさせ屋の一件で、玲志に漠然とした不安がのしかかる。

 ただの考えすぎだと思いながら胸騒ぎが収まらない玲志は、ついに無理を言って出張を中断した。

 東京にいる香蓮に会いたい一心だった。

 (何かすごく嫌な予感がする。香蓮、元気でいてくれ)



 東京駅に到着し、大急ぎで自宅のマンションに戻る。この時すでに、夜の十九時を回っていた。

 「香蓮、ただいま。いるのかー?」

 カードキーで玄関の扉を開けてすぐ、玲志は目を疑った。

 女性ものの靴が二足、と男性者の靴が目の前に置いてあったからだ。

 結婚式を挙げてから一度も人を呼んだことがなかったので心底驚く。

 「誰だ……?」

 「玲志さーん!」
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