冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い
奥の部屋から聞こえてくる甲高い声に、玲志は聞き覚えがあった。
廊下を走って来たのは、頬を上気させた愛理だ。
「愛理さん……どうしてここに?」
玲志は戸惑いつつ、厳しい表情で愛理を見る。
香蓮を傷つける者は、たとえ彼女の家族だろうが優しくはできない。
「お姉ちゃんに話があってきたんです。父も母も奥にいますよ」
胸騒ぎがさらに激しくなる。
玲志は飛鳥馬家との接点を無くしたい一心で動いていたし、香蓮も会いたくないと言っていたのに、どうしてこんなことになったのか理解できない。
「いったい、どういうおつもりですか」
玲志はリビングに入って早々達夫と由梨枝に問いただすと、彼らは楽観的に笑った。
「おやおや玲志君、随分早いご帰宅だなぁ」
「少しくつろがせていただきましたわ」