冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い

 テーブルには食べ物のゴミや、コップ、皿が散乱している。

 我が者顔で他人の自宅をこんなに汚すことができる神経を、玲志は疑った。

 「あれ? 香蓮は……?」

 当たり前のように彼女がいると思ったのに、見当たらない。辺りを見渡す玲志に、由梨枝が笑顔で近づいていく。

 「香蓮は出ていきましたわ」

 「何?」

 由梨枝の言葉に、彼は顔をしかめる。

 「あのお腹の子、玲志さんの子じゃないかもしれないんですって」

 「お腹の子……?」

 「香蓮、妊娠しているでしょう? 玲志さん以外にも関係を持っている人がいると、涙ながらに私に相談したんですわ。罪悪感に苛まれて家を飛び出してしまったんです」

 芝居がかった由梨枝を前に、玲志は混乱を極め黙り込む。

 (香蓮が妊娠とは? 何も聞いていないぞ)

 しかし玲志はすぐにピンときた。香蓮が大切な話がしたいと言っていたのは、このことに関してなのかもしれない。

 (あんなに愛してくれている彼女が他の男と浮気なんて信じられない。それに朝から晩まで一緒にいて、毎晩のように抱いていた)

 いつ自分との子を妊娠していてもおかしくない状況だ。

 (客観的にどう考えても、自分との子だろう)

 「そんな香蓮に代わって、妻に妹の愛理はいかがでしょうか?」
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