冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い
玲志の言葉に、達夫はさらに眉を寄せて険しい表情になる。
「あなたが請求書や領収書の改ざん疑惑で敗訴した裁判、僕が告発者に資料提供と資金援助をして勝訴させたんですよ」
「なんだって……?」
玲志はほくそ笑みながら、淡々と事実を話す。
「父の死後、改ざん前の資料が金庫からたくさん出てきたんですよ。子供ながらにまずいものを見たと思って……でも、何かあったときに、必ず役に立つと直感して大切に保管していました」
「くそ! お前だったのか!」
達夫は玲志の言葉に激高し、いきなり殴りかかる。
しかし華麗に交わした玲志は、驚いた達夫の左頬に一発お見舞いした。
「つっ……!」
床に転がった達夫を、玲志は冷ややかに見下ろす。
「父はあんたに裏切られたと気づきながら、まだ信じたかったんだ。あの資料の存在を、俺にも伝えずに死んだ……」
達夫は複雑な表情で玲志を見上げる。
玲志の瞳には怒りがにじんでいた。
「金輪際、俺たちに近づくな。早くここから出て行ってくれ」