冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い
達夫はじっと天井を見つめていたが、諦めがついたのかその場に立ち上がる。
「……いくぞ。由梨枝、愛理」
「達夫さん、話はまだ終わってないわ!」
「早く来るんだ!」
達夫が珍しく由梨枝に声を荒げ、張り詰めた空気が漂う。
達夫はさっさと玄関の方に歩いてしまったが、愛理と由梨枝は納得していない表情で玲志に詰め寄った。
「玲志さん、冷静になってください。香蓮なんかより絶対にこの子の方が……っ!」
「玲志さん!」
愛理が玲志の腕を掴もうとするが、彼はすかさず振りほどく。
「香蓮とあなたには雲泥の差がある。二度と顔を見せるな」
玲志の辛辣な言葉に、ふたりの理想はガラガラと崩れ落ちていく。
愛理と由梨枝は悔しさをにじませた表情で、リビングをあとにした。
三人が部屋から出ていったのを確認すると、玲志は着の身着のまま外に繰り出す。
「香蓮、どこにいるんだ……!」