冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い
『大丈夫だよ。電話してきて』
『ああ』
ポケットの中でずっと震え続けていたスマホを手に、玲志は香蓮の部屋を出ていく。
そんな彼の後ろ姿を見つめながら、香蓮は胸を痛めた。
(着信の名前、女の人だったな……玲志くん、彼女でもできたのかな)
もう幼き頃の彼の面影はない。
身長は高校生にしてすでに百八十もあり、水泳部に所属していたからか体躯もしっかりしている。
そんな男らしい体とは裏腹に、陶器のようにきめ細かな白肌に、細く高い鼻梁は女性的。
やや冷たい光を持った切れ長の瞳は知的で、誰だって心を奪われる。
香蓮にとって玲志はいつの間にか、〝手の届かない男性〟になっていった。
しかしいくら彼が魅力的な男に成長し、自分より親しい女性が登場したとしても、長年抱いていた恋心を簡単には捨てられない。
大勢の女性に混じって日々彼に恋い焦がれるしかなかった。
『お待たせ。続き、どこからだっけ』