冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い
足音
「んっ……」
目を覚ました香蓮は、自分がベッドの上で点滴をつけられた状態だと知ると、心底驚いた。
(私、お父さんたちから逃げてきて……そのまま道で倒れたんだわ。その後、この病院に運ばれたってこと?)
雪が積もっている冷たい場所で倒れたら、お腹にいる赤ん坊に影響が出ていてもおかしくない。
「赤ちゃん。無事なのかな」
まだペタンコのお腹を見て不安に襲われていると、コンコンッと部屋の扉をノックする音が聞こえ、そのままひとりの看護師が部屋に入ってくる。
「あら、日向さん。お目覚めでしたか。勝手に入って失礼しました」
「いえ……!」
恰幅の良い女性看護師は、香蓮に運ばれてきたときの経緯を教えてくれる。
「今、あなたは産婦人科の病棟で治療を受けています。ひどい貧血を起こしていたので、点滴で栄養補給してますよ」
「それで……子供は?」
震えながら香蓮が尋ねると、看護師はにこやかに笑う。
「ええ、無事に元気に育っていますよ」