冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い
彼はそうつぶやくと、香蓮を強く抱きしめた。
香蓮は玲志の振り絞るような声に、抱きしめる強さに、自分は心底愛されているのだと痛感する。
しかし漠然と、玲志が他に女性がいるのではないかという不安が彼女の心を苦しめた。
「香蓮。さっき飛鳥馬家と話をつけてきた」
「え……?」
「彼らが俺たちに近づくことは一生できないようにする」
はっきりと言い切った玲志は、香蓮から体を離す。
戸惑う香蓮を、彼は濁りのない目でまっすぐ見つめた。
「自分よりも大切な存在……香蓮とお腹の子を不幸にする者は、たとえ君の親だろうが許すことはできないからだ。分かってくれるか?」
香蓮は玲志の言葉に、様々な状況を察した。
きっと自分が部屋から出ていった後、飛鳥馬家と玲志が話す時間があったのだろう。
どんな会話が繰り広げられたか定かではないが、玲志は最終的に香蓮とお腹の子を選び、守ってくれたのだ。
その事実が何よりも嬉しくて、彼女は涙を堪え大きく頷いた。
「はい。私にはもう家族は存在しません。玲志さんとこの子を守りたい。そして、私も幸せになりたいです」