冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い
玲志は出張先で起こった数々の出来事と、飛鳥馬家が愛理と香蓮を結婚させようと様々な工作を行っていたと説明した。
香蓮は飛鳥馬家が娘の幸せを願うのではなく、自分たちの思い通りに事を運ぶよう水面下で動いていたのが悲しかった。
しかしその事実は、香蓮にとって“家族”への未練を完全に断ち切るのに十分すぎるものだった。
「玲志さん、本当に大変な思いをさせて申し訳ありませんでした。家族として最後に謝らせてください」
「香蓮。もういいんだよ」
玲志は頭を下げた香蓮の顎をすぐい上げ、そっと自分の唇を重ねる。
「過去がいくらひどくても、俺たちは今も昔も変わらずに想いあっているだろう? それが真実だ」
「玲志さん……」
玲志は微笑むと、再び香蓮の軟らかい唇にキスを落とす。
ここがどこだったのかも忘れてしまうほど、ふたりは自分たちの世界に没頭していく。
「誰も俺たちを引き裂くことなんてできない」
キスの雨が止み、香蓮の耳元で玲志が囁く。
(もう私たちの邪魔をする人はいない。三人で必ず幸せになってみせる)
広い背中をぎゅっと抱きしめながら、香蓮は満たされた気持ちで目を閉じた。