冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い
幸福
「ちょうちょー、ちょうちょー。なのはに止まれ」
玲志はかすかに聞こえてきたピアノの音色で目を覚ます。
遅れてキャッキャッと我が子が喜ぶ声が聞こえてきて、思わず前髪をくしゃくしゃとかき上げた。
「朝から可愛いな。俺の姫たちは……」
玲志は寝室から出てリビングの扉を開ける。
すると香蓮が子供用のピアノで伴奏し、一歳になる娘『心音』が満面の笑みで体を揺らしていた。
「あっ、玲志さん、おはようございます。もしかして起こしちゃいましたか?」
玲志の気配に気づいた香蓮が伴奏を辞めると、心寧は不機嫌そうに唇を尖らせる。
「うーっ、うーっ、うー」
「おはよう、ふたりとも。可愛い君たちのセッションが聞こえてきて、最高の目覚めだったよ」
玲志は笑顔で心音を抱き上げ、逞しい腕の中でゆりかごをしてやる。
すると心音はすぐに機嫌を直し、バタバタと体を激しく動かし喜びを露にする。
「おっと、心音暴れるな。いくら俺が好きだからって」
「ふふっ、じゃあ玲志さん。私、すぐに朝ご飯を用意するので心音と少し待っていてくれますか?」
「わかった」