冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い
玲志は心音を抱き上げたまま、ソファに腰を下ろす。
「ばぶー、ばぶー!」
「ん? 心音も腹が減ったのか?」
親指を咥えながら玲志を見つめている大きな瞳は、香蓮にそっくりた。
鼻も口も小さいのでわかりづらいが、なんとなく彼女に似ていると玲志は思った。
(なんでこんなに可愛いんだろう。仕事場に連れて行きたくなるな)
玲志は自分が基本的に冷徹な人間だと自負があったため、心音が生まれてくるまで子供に優しくできるだろうか不安で仕方がなかった。
だが、香蓮にそっくりな彼女が生まれた瞬間。何もかもが愛おしくてたまらない。
ころころと変わる表情を何ひとつ見逃したくないし、すべて記憶に刻みたいとさえ思ってしまう。
「うー、うー!」
「うん、俺も大好きだよ。心音」
心音を見て、玲志はさらに香蓮への愛情を深めていく。
彼女が自分との子を命がけで産み、毎日こうやって一生懸命育ててくれることに感謝する日々だ。
「じゃあ、ふたりとも行ってくる」