冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い

 香蓮の驚いた声を聞いて、玲志はくすくすと楽し気に笑う。

 「覚えてるわけないよな。俺がひとりでさっさと提出した日だから」

 「そっか……私たちにも結婚記念日が存在するんですもんね」

 腕の中で納得したようにつぶやく香蓮の頬に、玲志はちゅっと淡いキスを落とす。

 「だから実は、香蓮の好きなショートケーキも用意した」

 「えっ、本当ですか?」

 「今から食べよう」

 玲志の提案に、香蓮は笑顔で大きく頷く。

 玲志が買ったケーキをテーブルにならべ、ふたりはソファに横並びに座った。

 幸せそうに微笑みながらケーキを口に運ぶ香蓮に、玲志は見惚れた。

 彼女は心音を出産してから、今まで以上に優しい顔で笑うようになった。

 この香蓮の笑顔をずっと守っていきたいと、しみじみ思う。

 すると玲志の視線に気づいた香蓮が、笑顔で振り返る。

 「玲志さん、どうしました?」

 「ああ……いや。香蓮が美しくて見入ってしまっただけだ」
< 149 / 150 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop