冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い
『えっと、ここからだよ』
マーカーで引いた文章を指先でなぞる手が震え、とっさに机の下に隠す。
(泣いちゃダメ。せっかく玲志君が勉強を教えてくれているのに)
香蓮は大きなショックを受けていた。玲志に親しい女性がいると知って。
けれど電話の主が彼女なのかどうなのか、これ以上ショックを受けたくない臆病者の彼女に聞く勇気はなかった。
『どうした? 元気ないけど……学校で何かあったのか?』
すぐに香蓮の変化に気づいた玲志は、真剣な顔で彼女を見つめる。
『ううん。次の期末テストが上手くいくか不安なだけ』
口ではそう言うが、頭は玲志のことでいっぱいで勉強どころではない。
『香蓮はちゃんと最後までやり切る子だろ。俺はずっと傍で見てきたから、分かるよ』
『玲志くん……』
『自分を信じて』
玲志は彼女を安心させるように微笑んだ。
『もし期末テストの成績が良かったら、香蓮が今、一番ほしいものをあげる。考えておいてくれるか?』