冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い
『もちろん。玲志君のこと応援してる。誰よりも』
必死で笑顔を作っていた香蓮だったが寂しさのあまり、再び涙をこぼす。
(本当にいなくなっちゃうんだね。玲志くん)
手で顔を覆った彼女を、ついに玲志は包み込んだ。彼の懐に収まった彼女の心臓が、早鐘を打ち始める。
『俺がいなくなるのが、寂しいのか?』
生地ごしに伝わる彼の体温は、想像していたよりずっと熱い。
厚い胸板に顔をうずめると懐かしい肌の香りが、香蓮の脳裏に幼い彼を蘇らせた。
『当たり前だよ。ずっと一緒にいたのに』
『うん……』
(好きだから、本当に寂しい。でも……好きだから応援してあげたい)
心優しい香蓮は彼の広い背中に腕を回し、愛おしむようにそっと撫でる。
すると玲志はいっそう強い力で彼女を抱きしめ、赤く色づいた耳朶に唇を寄せた。
『もし俺が夢を叶えて、日本に戻ってこられたら……』
玲志はそうつぶやくと、黙り込んでしまう。
言葉の続きを待っていた香蓮だったが、沈黙を続ける玲志が心配になり、そっと距離をとる。
『玲志君?』
彼と視線を合わせると、いつものように優しく微笑まれた。
『ううん、なんでもない。じゃあ、勉強の続き、しよう』