冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い

 体に残った甘い余韻は、諦めたいと願う彼女へ反発するように恋心を育てる。

 玲志と別れた後も、そのあくる日も香蓮は彼のことを考えていた。

 (この苦しみから、どうやったら解放されるんだろう)

 実らない恋と分かっているし、伝えないでいたほうが傷は浅いとばかり思っていた香蓮の心が少しずつ変化していく。

 このままだと、この想いが永遠に玲志君へ伝わることはない。

 心に留めているほうが苦しみが続くような気がしてきたのだ。

 ならば彼がいなくなってしまう前に、振られて諦めるほうがずっと心が楽になるのではないか。

 そう考えた香蓮は、ついに決心する。

 テストの結果を伝えるのと一緒に、玲志へ自分の恋心を綴った手紙を渡すと。

 (必ずテストで結果を出して、玲志くんにお手紙の返事をお願いする)

 妹のような自分を一度だけでも“女性”として考えてもらう機会が欲しいと、香蓮は玲志に頼むつもりだった。

  しかし――。

 『玲志くんは学校で忙しくて、しばらく来れないみたい』
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