冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い
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「玲志君、私、頑張るから」
香蓮は記憶の中にいる彼に話しかけると、ベッドからのっそりと上体を起こす。
おぼつかない足取りで、壁に立っている本棚から大きなアルバムをひとつ取り出し、いつものページを開く。
(どんなことがあっても、ちゃんと生きてみせる……)
幼いころの自分と玲志が、シロツメクサの芝生に身を寄せ合って笑っている写真を見つけ、指先でそっとなぞった。
香蓮がどんなに苦しい状況にあってもなんとか踏ん張れているのは、玲志に再会できる望みが0%ではないから。
(何年かかってもいい。生きているうちに、もう一度会いたいの。そのときには、私のこの気持ちも笑いごとになっているといいな)
アルバムを閉じた香蓮は、本棚にしまわずに胸の中で抱きしめる。
彼女の彼への想いは十年前と変わらずに、ずっと灯ったままだ。