冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い
 香蓮は卒倒しそうになりながらも、なんとか口を開く。

 「ぜ、全然、話が見えてきません。どうしてこんなことになったのか、教えて頂けますか……?」

 様変わりした玲志を前に、香蓮は昔のように気さくに振舞うことはできない。

 一方玲志はゆったりとした笑みで、落ち着き払っていた。

 「というのもね、俺は今、SKMコーポレーションの代表取締役をしているんだ」

 「SKMってあの、ゼネコンの……?」

 「ああ、よく知っているな」

 香蓮はASUMAの取引先を調査する際に偶然『SKMコーポレーション』について調べたことがあった。

 超高層ビルや首都の駅開発を得意としており、スーパーゼネコンと言われる大手ゼネコンの中でも圧倒的なノウハウと技術を誇っているらしい。現在の事業範囲は日本に留まらず、上海やアメリカ、シンガポールなど世界にも及ぶという。

 そんな超大手会社のトップに玲志がいるなんて、理解が追い付かない。

 何せ彼は水泳選手を志していたはずなのだから……。

 けれどこの会っていない間の十年で、何か大きな出来事があったのだろう。

 困惑する香蓮を前に、玲志はすでに用意されていた煎茶を一口飲む。

 「藤山さんとは祖父の代から親しくてね。彼が持っている土地に高層ビルを建てる計画が前々からあって、最近よく顔を合わせていたんだ。そんなときに、藤山さんの口から君と結婚するというのを聞いた」

 藤山が知らぬところで自分との結婚をあちこちで言いふらしていたというのはショックだ。

 女好きな性格から考えれば仕方がないことなのかもしれないが、いい気はしない。

 「そこで、藤山さんの高層ビルの施行を格安で請け負うかわりに、君との縁談を譲ってもらった」
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