冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い

 香蓮は息を上げたまま玲志から距離をとると、震える手で万年筆をとる。

 そして最後の〝蓮〟という字を書き、玲志に婚姻届けを渡した。

 「お願いします」

 淫らなキスをした後でまともに目を合わせられない彼女から、玲志はそれを受け取る。

 黙って上から順に視線を流し書類の確認を終えた彼は、突然、声を殺すように笑いだした。

 「玲志君……?」

 不備があったのではないかと焦る彼女に、笑うことをやめた玲志はちらりと視線を送る。

 その眼差しがあまりに冷たく、一瞬にして香蓮の体のほてりが引いていった。

 「俺に従ってもらうよ。香蓮」

 「従うって……?」

 突然の物騒な物言いに、香蓮は思わず後ずさった。

 先程の甘い空気などは微塵も感じない。彼が自分を見つめる目に嫌悪感がありありと感じられた。

 「玲志くん? 一体、どういうことなの?」

 「俺がこの世で一番憎いのは、飛鳥馬の一族だ。もちろん、君も含まれている」
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