冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い

 声を振り絞った香蓮は玲志の腕を再びぎゅっと握った。

 「わ、私にも心があります……愛がないまま体を重ねることは……やっぱりできない……」

 わずかに目を見開いた玲志は何も言わず、泣き出しそうな彼女の顔をしばし見つめる。

 そしてふっと口角を上げて笑った。

 「愛? 君は俺からの愛がほしいのか?」

 「……っ。それは……」

 玲志に痛いところを突かれ、表情を歪める。

 口を噤んだ彼女を鼻で笑った玲志は、そっと上体を起こし、乱れたシャツを整えた。

 「買われた身分のくせに、愛がないとセックスできないだなんて。とんだわがまま娘だな」

 玲志の厳しい言葉に身体のほてりは一気に冷め、硬く縮こまっていく。
 
 恐る恐る顔を上げた香蓮は彼の顔を見てすぐ、ごくりと息を吞んだ。

 (れ、玲志さん……?)

 なぜか玲志までもが、苦しそうに表情を歪めていた。

 どうしてそんな表情をするのか香蓮が分からないでいると、玲志は彼女に背中を向けてリビングのドアノブを握った。

 「明日、必ずうまくやれ。下手なことをしたら、飛鳥馬家に送り返す」

 「は、はい……」
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