冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い
拒否しようと口を開いた玲志だったが、今朝の疲れ切った彼女の姿を思い出し、思いとどまった。
「ええ、お願いします」
(本番に下手なことをされても困るからな)
ウェディングプランナーに案内され、香蓮のいる控室までの廊下を歩いていく。
すると聞き覚えのある声がかすかに聞こえ、玲志は思わずその場で足を止めた。
「いくら綺麗に着飾っても、あんたの芋くささってぬぐい切れないのね~!」
「お姉ちゃん、ドレス全然似合ってない!」
玲志が足を止めたことに気づいたウェディングプランナーは、笑顔で後ろを振り返る。
「どうしました?」
「……いえ。あの、香蓮の控室は分かったのでここまでで大丈夫です。少しふたりきりにさせて頂けますか?」
「かしこまりました。まだ時間はありますので、ゆっくりとどうぞ」
ウェディングプランナーに由梨枝と愛理の声は聞こえなかったようだ。
玲志に言われるまま、彼女は廊下の向こうへと消えていく。
玲志は居心地の悪さを感じながらゆっくりと香蓮の控室に近づいていった。
「お姉ちゃん、玲志さんと上手くやってるの?」