冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い
 声が聞こえてくる控室の扉が少し開いており、指を差し入れるとさらに戸が開く。

 玲志の視線の先に見えるのは、真っ白なウェディングドレスを着た香蓮と、黒のロングドレスを着た由梨枝、そして彼女の隣にべビーピンクのシフォンワンピースを着た愛理。

 「それは……」

 愛理の質問に戸惑う香蓮を見て、由梨枝が高らかに笑い声をあげる。

 「あんたじゃ玲志さんを満足させられるわけないじゃない。せいぜいもって一年ってとこかしら」

 「私だったらもう少しうまくやるのになー、お姉ちゃんがだめになったら、ちゃんと私を紹介してよね」

 「ひ、ひどい……今から結婚式なのに、そういうことを言うなんて……!」

 その異様な光景を玲志は信じられない思いで凝視していた。

 必死で香蓮が反論しようとするも、由梨枝の大きなため息が容赦なく阻止する。

 「玲志さんの妻になったからって調子に乗るんじゃないわよ。あんたは達夫さんに売られただけなんだから」

 「お母さん……」

 「娘は愛理ただひとり。あんたなんてどうでもいいのよ」

 明らかに由梨枝の言葉に傷ついた香蓮の横顔を見て、玲志はいてもたってもいられず思い切り扉を開けた。

 「今の、どういう意味ですか」
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