冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い
部屋に入って来た玲志を見た三人は、その場で固まる。
「れ、玲志さん……」
震える声で口を開いたのは、香蓮だった。
彼女の美しい顔に、涙のしずくが一粒流れているのに気づき玲志は目を細める。
「香蓮、大丈夫か」
玲志は躊躇せず彼女を懐にたぐり寄せ、その華奢な体を抱きしめる。
彼の腕に包まれた香蓮は一瞬戸惑ったが、ふと安心したように厚い胸板に顔をうずめた。
「僕の妻を傷つけるのはやめてください」
香蓮を抱きしめながら、玲志の口は勝手に動いていた。
香蓮を容赦なく傷つける由梨枝と愛理に対し、嫌悪の感情が心を渦巻いている。
そして自分が何か大きな勘違いをしていたことに激しく恥じていた。
「れ、玲志さん……これはただの冗談ですのよ? 私たちよくこうやって、ちょっと意地悪を言ったり……」
この状況がかなりまずいものだと理解した由梨枝が必死に取り繕うも、玲志は香蓮を抱きしめたままさらにふたりと距離をとる。
「冗談にしては度が過ぎている。もしこのようなことを続けるのであれば、融資の内容を大きく変更させて頂きます」