冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い
香蓮は視線を落とし微動だにしなかったが、やがてうっすらと口を開く。
「なんとか生きていきたかったんです」
「え……?」
「自由を奪われて身動きが取れなくても、どうしても生きていたかった」
香蓮ははっきりとそう告げると、顔を上げて玲志の目を見つめた。
「玲志さんに再会できる日がくるのなら、頑張って耐えようって思えた……ただ、それだけです」
香蓮の言葉に玲志の心臓がドクンッと大きく音を立てる。
(俺に再会するため……?)
香蓮の頬が赤くなっていくのを見て、玲志はとっさに視線を外す。
意味が分かると少し遅れて目の奥が熱くなっていった。
それを悟られたくなくて、彼女に背を向けた玲志は控室の扉に向かって歩き出す。
「よく分からない。落ち着いたら、ちゃんと話をしよう」
玲志は大人げない自分の態度に恥じながらも、今は彼女の顔をまともには見られない。
「今日の結婚式はしっかりとやってくれ」
「はい……」