冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い
自宅に到着した香蓮はカードキーをかざし玄関の扉を開ける。すると人感センサーライトが彼女に反応し、煌々と光を放った。
パッと照らされた足元を見て彼女の心臓がドキリと跳ねる。
いつもこの時間にないはずの本革のビジネスシューズが綺麗に並んでいたから。
「れ、玲志さん。おかえりなさいませ」
香蓮が緊張した面持ちでリビングの扉を開くと、すでに部屋着に着替えソファでくつろいでいる玲志がちらりと彼女へ視線を流す。
いつもきれいに整えられている玲志の長めの前髪が無造作になっており、毛先が少し濡れているように見える。
雰囲気的にすでに入浴を終えているようだった。
「ただいま」
言葉少なに呟いた彼にじっと見つめれ、香蓮の頬がじんわりと熱を持つ。
「あ、えっと……今日は随分早いお帰りなんですね。珍しいなと思って」
イレギュラーな状況に香蓮の声が自然と上擦る。
すると玲志は気だるげにソファから上体を起こし、その場に立ち上がった。
「今日は会議が変に長引いて疲れたから、とっとと帰って来た」
「しょ、食事は済ませていますか?」
「いや、これからだ。一緒に食べよう」