冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い

 香蓮は玲志の言葉に耳を疑う。

 同居して二カ月が経つが、ふたりで食事を囲んだことなど一度もなかった。

 まして玲志から誘ってくるなんて考えられなかったのだ。

 (れ、玲志さん。一体どうしたんだろう……)

 香蓮は振り返った玲志に戸惑いながらもこくこくと頷く。

 「ぜ、ぜひ。今用意するので少々お待ちくださいね」

 「ありがとう」

 すぐに玲志から礼が返って来て彼女の心拍数はさらに上がる。

 リビングから出ていった玲志を見送って少ししてから、洗面所のほうからドライヤーの音が聞こえてくる。

 香蓮はその音を聞きながら、ハウスキーパーに作ってもらった料理たちを冷蔵庫からだし、鍋にかけたり、電子レンジの中に入れて食卓の準備を進めていく。

 自分の速くなった鼓動は大きなドライヤーの音でさえ、かき消すことはできなかった。

 (緊張する。玲志さんと何を話せばいいんだろう……)


 「いただきます」
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