冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い

 食卓には白米、さんまのきのこソース、里芋と小松菜のごまみそ和えと秋の旬の味覚を使った料理がずらりと並ぶ。

 向かい合って手を合わせたはいいものの、玲志は黙って箸を口に運び、緊張していた香蓮はコップに入れた麦茶で乾いた喉を潤した。

 「今日はどこに行っていたんだ?」

 半分食事が進んだあたりで向かい側から声が聞こえて、香蓮は箸を止めた。

 「今日は、英会話でした」

 「順調か?」

 「じゅ、順調です」

 結婚式から浮かれていてまともに授業内容が頭に入っていないなんて、口が裂けても言えない。

 ここはスムーズに嘘をつけたらよかったが、後ろめたいことがあるため香蓮は言い淀んだ。

 「君がいくつ習い事を掛け持ちしているか分からないが、頑張りすぎなくていい」

 「え……」

 玲志は顔を上げ、驚く香蓮の大きな瞳をまっすぐ捉える。

 「色々試した中で、自分が楽しめるものだけ続けてくれればいい。君にもう無理強いはしたくないと思っている」
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