冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い
細められた切れ長の瞳から確かな心配の色を感じ、じわりと頬に熱が集中する。
「ごめんなさい私……」
「まだ食べ終わってないんだろ? 食器くらい自分で片付けられるから気にするな」
「は、はい」
鼓膜に響く彼の声は甘く、香蓮の胸をときめかせる。
玲志は自分を許してくれたのではないかと、錯覚してしまうほどに。
玲志は香蓮が体勢を整えたのを確認し距離をとると、胸がちくりと痛んだ。
香蓮は彼の温もりが離れていくことが寂しくなったのだ。
「玲志さん、あの……」
「え?」
香蓮は無意識に食器を持って歩き出した玲志を呼び止める。
振り返った玲志の不思議そうな表情を見た途端、急に恥ずかしさがこみ上げてきた。
(私ったらつい……でも……今だったら、もっと玲志さんと話せるかもしれない)
香蓮の頭の中で玲志への様々な言葉が思い浮かんだが、一番彼女が強く想っている感情が口から零れた。
「私、玲志さんの力になりたいです。よかったら、お仕事……手伝わせてくれませんか?」