冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い
「手伝う?」
玲志は香蓮の言葉に訝し気に眉を顰める。彼女はそんな彼の反応に怯みそうになるも、必死で言葉を紡いだ。
「はい。今まで父の会社で経理だったり秘書もしてきたし何かお役に立てるんじゃないかと思って……迷惑でしたらすみません」
香蓮は自信なさげに俯いて、黙ってしまう。
そんな彼女を驚きながら見下ろしていた玲志だったが、やがて口を開いた。
「ありがとう。考えておく」
反射的に香蓮が顔を上げると、すでに玲志は彼女を見ておらず背中を向けて歩き出していた。
「でもいいのか? せっかくの自分の時間をうちの仕事で潰すなんて」
「潰すだなんて。玲志さんのお役に立てるほうが、私にとってよっぽど大事です」
はっきり言い切った香蓮に困惑した玲志は、思わずその場に立ち止まった。
「玲志さんは今まで何度も私を救ってくれました。だから困っていることがあったら、なんでも言ってください」