冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い
エンジンがかかり、玲志がハンドルを握る。
窓の向こうの景色が殺風景な地下駐車場から、あっという間にネオン輝く夜景の景色に変わっていく。
会社がある品川区から二人が住む湾岸エリアまでは、車で二十分。平日の夜ということもあり、多く見積もって三十分ほどかかる。
たった数十分とはいえ、香蓮はこの狭い空間で重い空気に耐えられる気がしなかった。
「……そんなに気に病むな。今後気を付けてくれればいい」
じっと窓の外を見つめていた香蓮の耳に、玲志の声が届く。
香蓮がそちらに顔を向けると、玲志はハンドルを握ったまままっすぐ前を見つめていた。
精悍な雰囲気を纏う美しい横顔を見ていると、鼓動がはやまっていき、胸がぎゅっと締め付けられる。
「玲志さん、ありがとうございます。私、頑張りますので」
「ああ、ほどほどに頼む。こんな面倒な仕事、引き受けてくれて感謝してるんだ」
玲志の言葉はぶっきらぼうだが、以前のような悪意を持ったニュアンスではなく、敬意すら感じる。
喜ばしいことなのだが香蓮はやはり戸惑った。
なぜ、玲志が急に自分に優しくしてくれるのか分からないのだ。
「君に、謝りたいと思っていた」