冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い
玲志の振り絞るような低い声に、香蓮は耳を顰める。
ハンドルを握る彼の目が苦しげに細まり、彼女の心臓がドキリと跳ね上がった。
「今まで君を苦しめるようなことを言って、申し訳なかった」
玲志の声は切実で、香蓮の鼓動はいっそう速まっていく。
彼の言葉に偽りは感じないが、彼女は腑に落ちない。
「俺は、君がASUMAに籍を置き、好き勝手やっているとばかり思って恨んできた。だが実際は、あの男と継母たちに翻弄されて生きてきた」
「……家族の内情を玲志さんが知る由もないですし、私を恨むのは……仕方のないことです」
突然謝罪を始めた玲志に香蓮は戸惑ったが、同時に、甘い言葉が胸に響いて体が火照る。
「いや、どれだけ考えても君は悪くない。ひどい扱いをされてきた君にさらに苦しめるようなことを言ってしまった。……本当に、悪かった」
玲志の温かい言葉に胸を打たれ、香蓮の目頭が熱くなる。
(玲志さんが最近優しかったのは、今言ってくれた理由で……?)
言葉を発せず彼女が黙っていると、やがて車が赤信号で停車した。
玲志は体を横に向け、まっすぐ彼女を見つめる。
「香蓮。これからは君を俺の妻として、大切にしていきたいと思っている」