冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い
甘美
香蓮が個人秘書代理になって、あっという間に二週間が経った。
既に立花から教わった基礎的な事務作業は完全にマスターし、今は取引先の情報を暗記しながら、玲志のスケジュール管理や来客対応を行っている。
もう少し慣れたら彼に代わって、メールのやり取りもこなせるだろう。
玲志との関係は順調だ。
他愛のない会話に加え仕事の話もできるようになり、彼の仕事量も目に見えるほど軽くなった。
昔ほどではないが、普通に話せている。
「香蓮さん、書類をお持ちいたしました。どうぞご確認ください」
「ありがとうございます」
夕方すぎ。秘書室からやって来た立花から、香蓮は笑顔で明日の会議の資料を受け取る。
SKMコーポレーションの従業員は親切で優しい。
数年働いていた実家の“ASUMA”とは、働きやすさに雲泥の差がある。
立花をはじめみな香蓮を気にかけ、スムーズに仕事ができるよう手助けをしてくれるのだ。
会社全体の雰囲気を決めるのは指揮を執っている上の者の空気で変わると聞いたことがあったが、本当にその通りだと香蓮は思った。