冷酷社長が政略妻に注ぐ執愛は世界で一番重くて甘い

 玲志の艶やかな囁きに、香蓮は顔を赤くして黙り込む。

 すると玲志は至近距離で彼女を見つめたまま、彼女の乱れた髪をさりげなく整えた。

 「今日はわがままな君がみたい。遠慮はいらない」

 「玲志さん……」

 視線が絡み、ふたりの間に熱がこもる。

 彼の美しい顔を見つめながら“男”としての玲志を感じるのは、何度目だろう……と香蓮は思った。

 だが、今まで見たどんな彼よりも甘く優しく、危険な香りがした。

 視線を絡ませふたりがじっとしていると、アクセサリーを持った外商がふたりの傍までやって来た。

 玲志が視線を解いたタイミングで、香蓮の緊張の糸が千切れる。

 (このまま見つめ合っていたいだなんて……私、なんだかおかしいわ)

 玲志に特別触れられたわけでもないのに、彼の眼差しで体が火照りどうしようもなく胸が高鳴る。

 それは百貨店を出てレストランで食事をしているときも、街をふたりで歩いていても変わらなかった。



 「まもなく開演でございます。お早目にお席にお戻り下さい」
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