謎めいたおじさまの溺愛は、刺激が強すぎます

プロローグ

 その人は、どんな人混みにいても、思わず目を惹き付けられるほどに、際立っていた。

 整った顔立ち、高い背丈。

 しかし、彼が人の目を引くのは、それだけではない。

 彼の纏う空気。醸し出す色気が、人々を惹き付ける。

 女は、まるで光に吸い寄せられる羽虫のように、彼へと飛んでいく。

 しかしそれは破滅への道でしかない。

 燃えさかる炎に飛び込めば、一瞬で焼き尽くされてしまう。

 
 分かっているのに、習性のように女は次々と飛び込んでいく。


 それは中毒のようだ。

 でも、私はそうはならない。

 そうならないよう、ずっと自分を律してきた。

 一時の快楽に溺れ、すべてを台無しにするような愚行は、決して犯さない。

 そう思っていた。

 けれど私は思い知る。

 私もまた、愚かな女の一人だったと。

 
 
 
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