NY・Sentimental
「王子様……」
「あ、今、その歳で王子様は笑えるって思ったでしょ?」
「思ってないよ。いつか迎えに来るの? カレンのところに」
「そう。探しに来るの」
「探しに?」
まだ出会っていないと言っているのか?
俺も、ジョージも、カレンの王子様じゃないと、そういう意味か?
「シンデレラがさ、ガラスの靴を落として行ったでしょ? わたしも落としちゃったのよ。王子様が持ってるのね、きっと。もしかしたら一生持ってるままかもしれないわね。でもどこかにそういう人がいるって考えるのは、夢のある話でしょ」
もうかなりアルコールの入ったほんのり色づいている目元を細め、照れたようにカレンは笑ってグラスのワインを空けた。
靴? 靴を落としたことがあるの?
「それはカレン、靴じゃないとダメなの? カレンが落としたのは靴?」
「違うわ。でも拾った人がいるのは知ってる」
カレンが落としたもの……って。
「シンデレラみたいに走ってて? それとも踊ってて?」
「え……」
カレンの表情が凍りついた。