NY・Sentimental
あれだけ大勢の前でした大失恋は、いっそふんぎりがついて、結果的にはよかったとも言える。
でも傷つかなかったか、と問われれば、答えは声を大にしてのノーに決まっている。
だからわたしは、その架空の人を待ち続けることで、わたしの運命を握る人は他にいるのだと、そう信じることにした。
飲み食いする手を休めずに、時々わたしを探るように見つめるセイジを、こっちも逆におかしな勘ぐりの視線で見つめ返してしまう。
まさかね。赴任前日のあの日、セイジは飛行機が遅れたと言っていた。
あの時間、マンハッタンに着くことが可能かどうかはわからないけれど、五番街のアベニューで迷っていた彼は、わたしに対してどう考えても初対面の面持ちだった。
わたしがバレエをやっていたことを言い当てたのも、三十二回ピルエットの話も、たんなる偶然だわ。
「ごめん。ちょっと失礼」