NY・Sentimental
「ジェシー。これ、ありがとう。ごたごたしてて、ずっと返すのを忘れてた」
ランチに入ったレストランで、わたしはジェシカ・オーエンの前に紙袋を差し出した。
ウエディングドレス専用のコルセットだ。
先に結婚した仲良しのジェシーはコルセットを買っていて、わたしは彼女からあの結婚式のためにこれを借りた。
Something Borrowed .
マザーグースの歌に出てくるSomething Fourの伝説、花嫁が身につけて式に臨むと幸せになれると言われる四つの品物の中のひとつに、Something Borrowed がある。
Something Borrowed .何か借りたもの、のつもりだった。
「返さなくったってすぐ使うことになるんじゃないの?」
「は?」
「どうなのよ? あの男と」
「あの男?」
「あの男自体が、うん、そう……まるでSomething newよねえ」