NY・Sentimental
◇
「カレンカレン」
廊下からフロアに入ろうとしたところで、ニックが声をかけてきた。
ものすごくせっぱつまった声だった。
「どうし――……」
「君のダディが……倒れたんだ」
「パパが?」
一瞬、何のことを言っているのかわからなかった。
パパなら充分元気だ。
国際線のパイロットをしているパパは今日はオフで、朝早くから起き出して家族に朝食を作ってくれた。
「君に直接電話したけど、出なかったそうだ。部署にかかってきたよ」
ああ、お昼でレストランがうるさくて聞こえなかった?
「カレン?」
戸口で突っ立っていたら後ろからセイジの声がした。
「ニック。何かの間違いじゃないの? パパ、持病なんかないわよ?」