NY・Sentimental
ふうん。こいつがね。
なんだか人がよさそうで騙されやすそうな雰囲気なんだけど、ニューヨークでやっていけるのかしら。
日本みたいにとにかく懇切丁寧、お客様第一で、親身になってあげるというだけでは、ニューヨークじゃ通用しないのよ。
「あの……」
「方向同じよ」
わたしは長い髪をかき上げた。
「そうではなく」
「はい?」
ついてきた彼は、いきなりわたしの胸元に手を伸ばす。
思いもよらない行動に虚をつかれたわたしは、一瞬、動けなかった。
「なっ!! 何をするのっ!!」
彼はわたしの三つ外してある襟元のカッターシャツのボタンを、瞬く間に二つ留めてしまった。