NY・Sentimental
君に読心術があったら、俺はもう口も聞いてもらえないかもしれないな。
「俺がついてる」
傷ついている君を、こうしてずっと抱きしめていたら、計算外の言葉が漏れるのを自分で止める自信がまるでない。
俺はそっと腕の力を抜いた。
「セイジ……」
その瞬間、カレンの唇から漏れた音も……俺の知らない響きを持っていた。
「ほら」
スーツのポケットからハンカチを出してカレンの涙をぬぐう。
「泣けるじゃないか」
今は上司なんかじゃない、俺の好きな、二つ年下の普通の女の子だよ。
「明日になったら忘れてよね」
「忘れるわけないだろ」
もったいない。