NY・Sentimental

3.◇something blue◇ 花連


一人になった部屋で、足先を揉む。
くやしいけれど、やっぱりスニーカーは楽だった。

「ばか」

唇をかみしめて下を向く。
こらえてもこらえても閉じた瞼から静かに涙が流れる。
こういう時に優しくするのがどれだけ罪つくりなことなのか、セイジはわかっていないのだ。

惹かれちゃいけない。
惹かれているわけじゃない。
わたしはこれから一家の唯一の稼ぎ手、大黒柱になる。

パパの病状が落ち着いて、住宅ローンやリラの学費のメドが立つまで、恋愛どころじゃない。リラには奨学金を取ってもらうほかないのだろうか。ほとんどのアメリカ人はそうなのだけれど、実際それを背負って世間に出るのは厳しい。

セイジみたいに普段は有能なだけのいい人なのに、こんな時に限って余計な優しさを見せる男に、わたしの勝手な勘違いではまり込むわけにはいかない。

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