NY・Sentimental
ティアラを持っているどこかにいるはずの王子様を思いながら、わたしはこの危機を乗り切らなきゃならない。
乗り切ってみせる。
それでも……。
「ありがとう」
温かい涙が止まらない。
血の通った腕に抱き取られた時の安心感。
安らぎ。安堵。
心の隅々までセイジのぬくもりが広がっていくのを、わたしはどうすることもできなかった。
来てくれて嬉しかった。
もし来てくれなかったら、わたしはきっと今夜、こんなに平常心を保つことはできなかっただろう。
「別に、セイジだったからじゃない」
自分に言い聞かせるように声に出して呟いてみた。