NY・Sentimental
「一人で来いって言われたのよ。そのモトムラって男に。あいつ、何度かここにも来てるけど以前から、変な目でカレンを見てるわよね。一人で来れば契約って。絶対、おかしいと思わない? カレンだって自分でそれを感じてたからいままでは契約を匂わせられても一人では行かなかったのよ」
「どこで? どのくらい前に出て行った?」
「一時間くらい前かしら? ランチの時間はとっくに過ぎてるけど、一緒に取るそうよ。ドルトンホテルのグリルニューヨーク」
俺はとっさに腕時計を見た。
一時間前。
もうきっと食事に入っている。
なんてこった!
あのハゲ親父!
カレンは今、冷静を装ってはいるけど、父親のことで実は頭の中がぐちゃぐちゃなんだ。